日本では、大物歌手の覚醒剤使用事件や危険ドラッグ使用による致死事件など、薬物の問題が世論をにぎわせているが、米社会はいま、国全体が大麻(マリファナ)合法化に向かって猛然と突き進んでいる。
ワシントン州では7月上旬、州当局の認可を得た大麻販売店が続々オープン。コロラド州に続いて、成人の大麻吸引を認めた、全米で2番目の州になった。
コロラド州が大麻を解禁したのは今年1月。4月には、州都デンバーで大麻合法化を祝う大規模なイベントが開かれ、報道によると、全米から数万人が参加した。
米国では、医療目的での大麻の使用は、すでに20以上の州が合法化している。大麻には薬理作用があるためだ。しかし、ただ単に楽しむための吸引を法律で認めた州はこれまでなかった。
今年11月には、ワシントン州の南隣のオレゴン州と、アラスカ州でも、大麻を合法化するかどうかを決める州民投票が実施される。米国の自治体では、有権者に関心の高い問題を、議会による立法化とは別に州民投票で決めることが珍しくない。コロラド州とワシントン州の大麻合法化も、2012年秋に実施された州民投票で賛成票が反対票を上回った結果だ。
政府は容認姿勢
一方、連邦法は依然、大麻の所持も使用も認めていない。しかし米政府は各州の大麻合法化の動きに介入しない方針を表明し、事実上、容認する姿勢をとっている。
大麻“自由化”の動きはこれだけではない。医療目的に限っての大麻の使用を解禁する自治体も増えている。
イリノイ州では7月、てんかんの患者に発作を和らげる目的で大麻を処方することを認めた州法が成立した。来年1月に施行される。法案に署名したパット・キン知事は、「新しい法律は多くの患者の苦しみを和らげるのに力を発揮することだろう」との声明文を出した。ニューヨーク州でも同じ7月に、医療目的の大麻使用を認める州法が成立した。
さらには、大麻を原則禁止している自治体でも、少量の所持については大目に見ようという動きが出てきた。
首都ワシントンD.C.は、従来、大麻所持に対しては最高6か月の禁固刑と1,000ドルの罰金を科していた。しかし法改正の結果、7月からは、18歳以上に限っては、所持量が28グラム以下なら、25ドルの罰金と大麻の没収だけになった。25ドルという金額は、駐車違反の罰金より少ない。
米国の世論や報道を見ると、大麻“自由化”の動き今後も勢いを増しそうだ。では、この背景には何があるのか。
次号に続く。