2014年11月19日水曜日

マクドナルド、遺伝子組み換えジャガイモは使わない方針

 米ファストフード大手マクドナルドの大口取引先であるアイダホ州のJRシンプロット社が、米政府から遺伝子組み換え(GM)ジャガイモの商業栽培認可を受けたことでその対応が注目されていたマクドナルドは、同社からGMジャガイモを使った冷凍ポテトは購入しない意向を示した。AP通信が、アイダホ州の地元紙の記事を引用する形で伝えた。

マクドナルドは「米マクドナルドは遺伝子組み換えジャガイモを購入しておらず、また、現在の購入方針を変更するつもりもない」とコメントした。

 他のファストフード店やポテトチップスなどのメーカーがGMジャガイモを購入するかどうかは不明だが、GM食品の安全性に対する消費者の不安は米国でも強く、率先してGMジャガイモの購入に踏み切る大手企業はいまのところなさそうだ。一方、JRシンプロット社はスーパーなど小売店向けの販売を考えているようだと記事は伝えている。

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2014年11月10日月曜日

マクドナルドに逆風? 米農務省が遺伝子組み換えジャガイモを認可

 米農務省は11月7日、遺伝子組み換え(GM)技術を使って開発したGMジャガイモの商業栽培を認可した。米国では、大豆、トウモロコシについてはすでに作付面積の90%以上をGM品種が占めているが、GMジャガイモは現在、商業栽培は行われていない。

ジャガイモは米国人にとってきわめて身近な食材であるため。今後、認可されたGMジャガイモの安全性や流通をめぐって議論が巻き起こりそうだ。また、今回認可を受けたジャガイモ生産企業は、ハンバーガーチェーン大手マクドナルドの主要な取引先であることから、マクドナルドにGM論争の火の粉が降りかかる可能性もある。

認可を受けたのは、アイダホ州に本社のあるJRシンプロット社(J.R.Simplot Company)が開発したGMジャガイモ。ジャガイモはフライドポテトやポテトチップスなどを作る際に高温で調理すると、発がん性物質であるアクリルアミドを生成することが知られている。今回認可を受けたGMジャガイモは、ふつうのジャガイモに比べてアクリルアミドの生成量が少ないという。また、輸送などの際にジャガイモ同士がぶつかりあっても傷がつきにくいのも特長という。

米国内ではGM食品が広く流通しているが、GM食品の安全性や自然環境への悪影響を懸念する消費者は多い。ジャガイモに関しては、1995年に一度、モンサント社が害虫抵抗性を備えたGMジャガイモを発売したが、市場が広がらず、撤退に追い込まれたいきさつがある。

今回のGMジャガイモの認可報道を受けて、消費者団体は早くも、GMジャガイモの流通に懸念を表明している。センター・フォー・フード・セイフティ(Center for Food Safety)は、「現状では遺伝子組み換え食品に対する表示義務がないため、消費者はGMジャガイモかどうか知らずに買わされることになる」とGMジャガイモの流通に反対する。

一度、市場拡大に失敗しているGMジャガイモが、果たして今度は成功するのか。そのカギをにぎりそうなのが、マクドナルドの動向だ。

JRシンプロットは長年、マクドナルドに冷凍フライドポテトを納入しており、現在も主要取引先の一つ。GMジャガイモの大量生産が軌道に乗れば、GMジャガイモから作られたフライドポテトがマクドナルドに納入される可能性もないとは言えない。現地からの報道によると、消費者団体などはすでに、マクドナルドにGMジャガイモを使わないよう訴えかけ始めたという。

マクドナルドは、消費者の健康志向や安全志向の高まりという逆風を受け、苦戦が続いている。こうした状況で、「GMフライドポテト」がメニューに加わるようなことにでもなれば、消費者のマクドナルド離れが一段と進みかねない。マクドナルドの経営陣がどんな判断を下すのか、注目される。
 
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2014年11月9日日曜日

どこまで進む、米国の大麻自由化

 米国で、「大麻(マリファナ)自由化」の動きが加速している。

114日、オレゴン州とアラスカ州、そして首都ワシントンDC(コロンビア特別区)で、中間選挙と同時に、大麻自由化の是非を問う住民投票が実施された。

 結果は、自由化推進派の完勝だった。

 オレゴン州の条例案は、21歳以上の個人を対象に、娯楽目的で大麻を栽培したり所持したりすることを認めるという内容。大麻の商業販売も、州当局の営業許可を得た上で、可能になる。

 条例案は、賛成反対両陣営が激しいキャンペーンを展開した末、有権者の約55%が賛成票を投じ、承認された。新法は来年7月に施行される予定で、再来年には州公認の大麻ショップ1号店が堂々オープンする見通しだ。

コロラド州の大麻栽培施設
 アラスカ州の条例案も同様の内容で、投票の結果、約52%の賛成票を獲得し、承認された。

一方、ワシントンDCの条例案は、21歳以上の個人に対し、2オンス(57グラム)までの所有と6本までの栽培を認めるというもの。オレゴン州やアラスカ州と違い、商業販売は認めない。条例案は、事前の予想通り、大差で承認された。

米国では今年、2012年の住民投票の結果、コロラド州とワシントン州で、全米で初となる娯楽目的での大麻の使用が解禁になった。今回のオレゴン州とアラスカ州を合わせると、3年間で、全米50州のうち4州が大麻自由化の決定を下したことになる。

これに、首都が加わった意義も大きい。4州はすべて西海岸あるいは西海岸に近い州。これだけなら地域的な動きとして片づけることもできるが、東海岸のワシントンDCでも同様の動きが起きたことで、大麻自由化が全国的な現象になりつつあることを印象付けた。

もうひとつ注目すべきは、今回の大麻自由化条例が、いずれも娯楽目的での使用を主眼としていることだ。実は米国では、20前後の州で、大麻を医療目的で使用することが認められている。大麻には薬理効果もあるためだ。半面、娯楽目的、つまり嗜好品として大麻を吸うことは、これまで認められてこなかった。その意味では、今回の大麻自由化の動きは、米社会に起きている大きな変化のうねりを感じさせるものだ。

 もちろん、倫理面や宗教的価値観、治安の問題などから、大麻自由化に反対する声は多い。保守色の強い南部では、医療目的であろうと大麻の使用を認めている州はない。州レベルでは大麻を自由化したコロラド州でも、州内の自治体によっては依然、娯楽目的での大麻の使用を禁じているところもある。

 それでも米世論は、大麻自由化に確実に傾いているように見える。114日、南部フロリダ州で、医療目的での大麻使用を認めるかどうかを問う住民投票が実施された。結果は否決。だが賛成票は57%を超えた。否決されたのは、「賛成票60%以上で成立」との条件が付いていたためだ。

米国はこのまま、大麻自由化に向かってこのまま一気に突き進むのか。その行方を占うふたつのポイントがある。

 ひとつは、今回のワシントンDCの新条例をめぐる連邦議会の動きだ。米国の法律は、ワシントンDCのすべての条例は連邦議会の審査を経なければならない、と定めている。つまり、ワシントンDCの条例は、連邦議会がノーと言えば発効しないというわけだ。実際、共和党の連邦議員の中には、大麻自由化を認めた今回のワシントンDCの条例を問題視する声も出ている。

 しかし、問題はそう簡単ではない。現在の共和党にとって最も重要な命題は、2年後の大統領選に勝利すること。そのためには、幅広い層、とりわけ若年層の支持が必要となる(今回の中間選挙で共和党が勝利したのは、民主党支持者の多い若年層が棄権したのが一因と言われている)。若年層は大麻自由化を支持する率が高い。2年後の大統領選をにらめば、ワシントンDCの大麻自由化条例を黙認したほうが得策との計算が働く。

もうひとつのポイントは、2年後に実施される住民投票だ。2年後の大統領・議会選挙の際には、カリフォルニア州やマサチューセッツ州などさらに多くの州で、大麻合法化を問う住民投票が実施されると予想されている。中でも注目は、全米最大の人口を抱え、他州への影響力も大きいカリフォルニア州の動向だ。同州で大麻が全面解禁されれば、その是非は別として、大麻合法化の波が全米に一気に広がることも考えられる。

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