11月4日、オレゴン州とアラスカ州、そして首都ワシントンDC(コロンビア特別区)で、中間選挙と同時に、大麻自由化の是非を問う住民投票が実施された。
結果は、自由化推進派の完勝だった。
オレゴン州の条例案は、21歳以上の個人を対象に、娯楽目的で大麻を栽培したり所持したりすることを認めるという内容。大麻の商業販売も、州当局の営業許可を得た上で、可能になる。
条例案は、賛成反対両陣営が激しいキャンペーンを展開した末、有権者の約55%が賛成票を投じ、承認された。新法は来年7月に施行される予定で、再来年には州公認の大麻ショップ1号店が堂々オープンする見通しだ。
アラスカ州の条例案も同様の内容で、投票の結果、約52%の賛成票を獲得し、承認された。
一方、ワシントンDCの条例案は、21歳以上の個人に対し、2オンス(57グラム)までの所有と6本までの栽培を認めるというもの。オレゴン州やアラスカ州と違い、商業販売は認めない。条例案は、事前の予想通り、大差で承認された。
米国では今年、2012年の住民投票の結果、コロラド州とワシントン州で、全米で初となる娯楽目的での大麻の使用が解禁になった。今回のオレゴン州とアラスカ州を合わせると、3年間で、全米50州のうち4州が大麻自由化の決定を下したことになる。
これに、首都が加わった意義も大きい。4州はすべて西海岸あるいは西海岸に近い州。これだけなら地域的な動きとして片づけることもできるが、東海岸のワシントンDCでも同様の動きが起きたことで、大麻自由化が全国的な現象になりつつあることを印象付けた。
もうひとつ注目すべきは、今回の大麻自由化条例が、いずれも娯楽目的での使用を主眼としていることだ。実は米国では、20前後の州で、大麻を医療目的で使用することが認められている。大麻には薬理効果もあるためだ。半面、娯楽目的、つまり嗜好品として大麻を吸うことは、これまで認められてこなかった。その意味では、今回の大麻自由化の動きは、米社会に起きている大きな変化のうねりを感じさせるものだ。
もちろん、倫理面や宗教的価値観、治安の問題などから、大麻自由化に反対する声は多い。保守色の強い南部では、医療目的であろうと大麻の使用を認めている州はない。州レベルでは大麻を自由化したコロラド州でも、州内の自治体によっては依然、娯楽目的での大麻の使用を禁じているところもある。
それでも米世論は、大麻自由化に確実に傾いているように見える。11月4日、南部フロリダ州で、医療目的での大麻使用を認めるかどうかを問う住民投票が実施された。結果は否決。だが賛成票は57%を超えた。否決されたのは、「賛成票60%以上で成立」との条件が付いていたためだ。
米国はこのまま、大麻自由化に向かってこのまま一気に突き進むのか。その行方を占うふたつのポイントがある。
ひとつは、今回のワシントンDCの新条例をめぐる連邦議会の動きだ。米国の法律は、ワシントンDCのすべての条例は連邦議会の審査を経なければならない、と定めている。つまり、ワシントンDCの条例は、連邦議会がノーと言えば発効しないというわけだ。実際、共和党の連邦議員の中には、大麻自由化を認めた今回のワシントンDCの条例を問題視する声も出ている。
しかし、問題はそう簡単ではない。現在の共和党にとって最も重要な命題は、2年後の大統領選に勝利すること。そのためには、幅広い層、とりわけ若年層の支持が必要となる(今回の中間選挙で共和党が勝利したのは、民主党支持者の多い若年層が棄権したのが一因と言われている)。若年層は大麻自由化を支持する率が高い。2年後の大統領選をにらめば、ワシントンDCの大麻自由化条例を黙認したほうが得策との計算が働く。
もうひとつのポイントは、2年後に実施される住民投票だ。2年後の大統領・議会選挙の際には、カリフォルニア州やマサチューセッツ州などさらに多くの州で、大麻合法化を問う住民投票が実施されると予想されている。中でも注目は、全米最大の人口を抱え、他州への影響力も大きいカリフォルニア州の動向だ。同州で大麻が全面解禁されれば、その是非は別として、大麻合法化の波が全米に一気に広がることも考えられる。
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